あれこれ制限はありますが、とりあえず作ってみました。
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1ー3は実際に出題された用語で、「・」がついているものは、その年度の内容を読解するのに必要と思われた用語です。
心情語や慣用表現は例文の形で覚えるのが一番です。しかし、断片的な例文では、いまいちニュアンスが伝わらないのも事実。
そこで、多くの受験生が受験するセンター試験の文章をもとにして「小説用語」を整理してみました。この場合、例文はセンター試験の問題文そのものです。センター対策と「小説用語」対策(↑エッセイでもよく出ますよ)の一石二鳥を狙いましょう。
08(本)夏目漱石『彼岸過迄』
1 名状(めいじょう)し難(がた)い →→ 言葉で表現することが難しい。「名状」は言葉で言い表すこと。
2 眉を暗くした →→ (文脈)直前に「ますます」とあることに注目すると、それまで表れていた心情が強まっているのだとわかる。「嫉妬心」を抱いて「不快」で「苦悶」しているという場面なのだから、「不愉快」だということは明らか。なお、「眉を曇らす」は「心配そうな顔つきをする」の意。
3 気の置けない →→ 遠慮がいらず、気楽につきあえる。(対)気が(の)置ける
・回顧(かいこ) →→ 後になって過去のできごとを振り返ってみること。
・僻(ひが)み →→ 劣等感や引け目から、ものごとを自分に不利なようにゆがめて受け取ること。
・太平に →→ のんきに。思いわずらうことなくのびのびと。
・殊(こと)に →→ とりわけ。他のものからはっきりと区別して。
・偏屈(へんくつ) →→ 気むずかしく、他人の言うことに素直に同調しないようす。
・焦燥(もどか)しがらせる →→ 思い通りにならず、イライラさせる。「焦燥しい」は一般的表記ではなく当時の当て字。
・欺(あざむ)く →→ 真実ではないことを、真実だと思わせる。
07(本)堀江敏幸『送り火』
1 老成した →→ 年齢のわりに落ち着いていること。
2 不意をつかれて →→ 予期していないことに出会って。文脈上は直後の「顔を見合わせた」から「意外さ」が出ている選択肢を選ぶ。
3 教室の体裁(ていさい)をなし →→ 「体裁」は、内容を問わず、外見がそれらしいかどうかということ。
・還暦(かんれき) →→ 満六十歳のこと。干支の一巡りが六十年かかることから言う。
・連鎖(れんさ) →→ 物事が互いに結びついてつながっていること。
・はぐらかす →→ 話の中心をわざとずらしたり、あいまいにしたりして、追及から逃れようとすること。
06(本)松村栄子『僕はかぐや姫』
1 身の丈に合っていた →→ 「身の丈に合う」とは、自分のありようにぴったりくること。文脈上は直前の「おとなびた言葉よりは」という対比表現をヒントにする。
2 おずおずとした調子 →→ 「おずおず」は、ためらうような調子。恐れや不安からおっかなびっくり進めるようす。
3 一矢(いっし)を報いずには →→ 「一矢を報いる」とは、相手の攻撃に対して勝てないまでもやり返す、の意。
・世をすねる →→ 世間の価値観や決まりに対して納得できず、反抗したり背を向けたりすること。
・媚(こび)る →→ 相手に気に入られようとして、相手の喜びような態度をとること。=へつらう
・冷笑(れいしょう) →→ 相手を見下してあざ笑うこと。
・かたくな →→ 漢字にすると「頑な」。意地を張って自分の考えや態度を変えようとしないようす。
・隠蔽(いんぺい) →→ 人に知られないように覆い隠そうとすること。
・真摯(しんし) →→ 真面目で一生懸命なようす。
・抹消(まっしょう) →→ 消し去ること。
・庇護(ひご) →→ 弱いものを守ること。
・毅然(きぜん) →→ 意志が強く、周りのものに動じないようす。
・疎(うと)ましい →→ 好きになれず、遠ざけたい。
05(本)遠藤周作『肉親再開』
1 安易な声を聞いた →→ (文脈)「安易な声」の内容は、主人公のその後の行動から芸術を捨てることだとわかる。
2 たむろする →→ 群れ集まること。選択肢には文脈上の意味として「自分の夢を求め」が加わっている。
3 償われなくったって →→ (文脈)直前の「結果ではないじゃないの」より「償い」=「報われること」とわかる。
・憂鬱(ゆううつ) →→ 気が晴れず重苦しい気持ち。
・人いきれ →→ 人が多く集まっているため、そのにおいや熱気が強く立ちこめていること。漢字では「人熱(いき)れ」。
05(追)水村美苗(みなえ)『本格小説』
1 あたりの空気が闇を集め →→ (文脈)直前の「時間を忘れて遊んでいると突然」街灯がつくという描写と、「すると(順接)」で結ばれていることに注目すれば、この「闇」は街灯が生んだものだとわかる。
2 憑物(つきもの)が落ちた →→ 興奮など我を忘れるような状態が過ぎ、ふだんのようすに返った。
3 目を瞠(みは)った →→ 驚いたり感心したりして、目を大きく見開いた。
・昂揚感(こうようかん) →→ 精神や気分が高まること。
・摂理(せつり) →→ 自然界を支配している、人間の理解を超えた法則。
・恩寵(おんちょう) →→ 神や主君などが与える愛や恵み。
・書きあぐねる →→ 努力してもなかなか書くことができない。「~あぐねる」で「努力しても上手くいかない」の意。
・疎(うと)んじる →→ 気に入らないで、遠ざけようとする。よそよそしい態度をとる。
・当惑(とうわく) →→ どうしてよいかわからず、困り果てること。
・ひるむ →→ 相手の勢いや困難に直面して、しり込みしてしまう。
04(本)森鴎外(おうがい)『護持院原(ごじいんがはら)の敵討(かたきうち)』
1 恨(うら)みを呑(の)む →→ 無念な気持ち(=恨み)を心中に抱く。
2 是非に及ばない →→ 良いか悪いかを論じるまでもなく、そうせざるをえない。やむを得ない。
3 宥(なだ)め賺(すか)す →→ 機嫌をとって、こちらの都合よいように相手の気を変えさせる。
・暇(いとま) →→ 用事のない時間。そこから「お休み」や「職を離れる」や「離婚する』の意味になる。
・按排(あんばい)=按配・塩梅 →→ ものごとのようす。調子。
・のたれ死に →→ 道で行き倒れ、そのまま死ぬこと。
・能弁(のうべん) →→ 話し方がなめらかで上手なこと。
・手を拱(こまぬ)く →→ 腕を組むこと。そこから「何もしないでいること」、「傍観すること」の意味になる。
・発揚(はつよう) →→ 気持ちが高まること。意気が盛んになること。
・僥倖(ぎょうこう) →→ 幸運。特にあてにしても得られないような、思いがけないもの。
・嘲(あざけ)る →→ 馬鹿にして笑う。
04(追)三島由紀夫『剣』
1 率先垂範(そっせんすいはん) →→ 人の先に立って手本を示すこと。「率先=先だって行う」+「垂範=模範を示す」
2 些末(さまつ)な事柄 →→ 重要ではない、取るに足りないことがら。「瑣末」とも書く。=些細(ささい)な事柄
3 折り曲げて見る →→ (文脈)「折り曲げる」は比喩で、「ものごとを単純に見ない」くらいの意味。
・鬱然(うつぜん) →→ 樹木がこんもりと茂っているようす。本文では筋肉がたくましく盛り上がっていること。
・傲慢(ごうまん) →→ 自分の優位に思い上がって、相手を馬鹿にしたり身勝手な振る舞いをしたりするようす。
・やりきれない →→ 不快さや精神的な苦痛をがまんできない。
・ねぎらう →→ 目下の者の苦労や骨折りに対して感謝やなぐさめの言葉をかけること。
・寡黙(かもく) →→ 無口なこと、何も言わないこと。
・嘲笑(ちょうしょう) →→ 相手を馬鹿にして、見下すような笑い方をすること。
03(本)野呂邦暢『白桃』
1 心得(こころえ)顔 →→ いかにも事情をよく理解しているといった、得意そうな顔つき。
2 のっぴきならない →→ 避けることも、引き下がることもできない。抜き差しならない。「退っ引きならない」と書く。
3 たたずまい →→ 自然に伝わってくる雰囲気。ようす。ありさま。
・気むずかしい →→ 自分の考えにこだわり、他人とうちとけない。
・道理 →→ 物事が正しくすじみちだっていること。
・みくびる →→ 相手の実力を軽く見る。あなどる。
・けんまく →→ 怒ったときの、荒々しく恐ろしい顔つきや態度。
・面目めんぼく →→ 世間からうける評価。体面。
03(追)伊藤桂一『溯(のぼ)り鮒(ぶな)』
1 小康 →→ 病勢の悪化がとまり、ややよい状態で落ち着いていること。
2 醸(かも)す →→ ある雰囲気や状態をつくりだす。「物議を―・す」
3 駆る →→ (むりに)ある行動を取らせる。追い立てる。*文脈上は「せいいっぱい」というニュアンスになっている。
・安堵(あんど) →→ 安心し、心が落ち着くこと。
・憔悴(しょうすい) →→ 病気や心労が原因でやせおとろえること。
・鬱蒼(うっそう)と →→ 草や木がこんもりと茂り、うすぐらいようす。
・饒舌(じょうぜつ) →→ 口数が多いこと。=おしゃべり。
・駘蕩(たいとう) →→ おだやかでのびのびしたようす。
02(本)太宰治『故郷』
1 閉口する →→ いやになること。困ること。↓原義は「口を閉ざすこと」。場面によって意味が変わることに注意。
2 難物 →→ 扱いにくい人物。やっかいな人。
3 具合が悪い →→ 他と適合していない様子。つごうや、体面が悪いこと。
・かぶりを振る →→ 頭(=かぶり)を左右に振って、否定や不承知をあらわす。
・思わせぶり →→ 何か意味がありそうに人に見せかける言葉や態度。
・嗚咽おえつ →→ 声をおさえて(うっうっという音を立てて)泣くこと。むせびなくこと。
・ものものしい →→ いかめしく、おおげさなようす。
・はばかられる →→ (相手との間に不都合があるので)恐れつつしむ。遠慮する。
・情にほだされる →→ 相手の情にひきつけられて心や行動の自由が縛られる。
・悶着(もんちゃく) →→ 争いごと。もめごと。いさかい。
・健気(けなげ) →→ (弱いものが)一生懸命につとめる様子。
・饒舌(じょうぜつ) →→ よくしゃべること。
02(追)池澤夏樹『スティル・ライフ』
1 もちかける →→ 話などを持ち出す。
2 口をはさむ →→ 人が話している途中で横から何かをいう。
3 しかるべき →→ 適当な。ふさわしい。
・つじつまが合う →→ すじみちがよく通る。前後が矛盾しない。
・たしなめる →→ (目上の人が目下の人に対して)それはいけないことだと注意を与える。
01(本)津島佑子『水辺』
1 声を漏(も)らす →→ うっかり声をあげてしまう。
2 気を呑まれる →→ 思いがけない様子にあっけにとられる。
3 自分の目を疑う →→ 自分の見たものが信じられないほど意外である。
・くるぶし →→ 足首の両側にある骨の突起。
・しどろもどろ →→ 言葉や話の内容にまとまりがなく、あいまいなようす。
・いじらしい →→ か弱いものが懸命なようすが痛々しく同情される。けなげだ。
01(追)色川武大『雀』
1 邪気(じゃき)を殺す →→ (文脈)本文では「無/邪気なふりをする」の意。「大人の手前」/「健全に答えたにすぎない」とある部分から、問題文中の意味を決める。
2 喉(のど)を通りにくい →→ (文脈)「喉を通る」=「呑みこむ」には、「受け入れる」のニュアンスがある。よって「受け入れにくい」、「理解しにくい」。
3 目を寄越す →→ (文脈)比喩表現。「目線」を、「先方からこちらに送ってくる」の意。
・狂奔(きょうほん) →→ ある事に夢中になってそのために走り回ること。
・牛耳(ぎゅうじ)る →→ 中心となって人や組織を意のままに動かす。
・常套句(じょうとうく) →→ 同じような場合にいつも決まって用いる言葉。決まり文句。
・折衷(せっちゅう) →→ 両方のよいところをとってほどよく調和させること。
・ナイーブ →→ 純真で感じやすい性質であるさま。
・見まがう →→ 見誤ること。
00(本)堀辰雄『鼠(ねずみ)』
1 よい嗅覚 →→ (文脈)嗅覚はにおいに刺激されて起こる感覚。そこから「ささいなものを見つけ出す鋭い感覚」の意になる。
2 驚くべき自尊心 →→ (文脈)「自尊心」は「プライド」で、「自分の人格の独立を守り、品位を保とうとする気持ち」のこと。
3 さめざめと →→ しきりに涙を流して静かに泣くようす。
・とり繕(つく)ろう →→ ぼろの出ないようにことばをかざったり、うまくふるまったりする。
・夢うつつ →→ 夢か現実かはっきりしない、ばくぜんとした意識の状態。
・エピソード →→ 物語の途中にさしはさまれる、まとまった話。挿話。
00(追)日野啓三『風を讚えよ』
1 うごめき →→ 全体がいつも少しずつ動いているようす。虫や正体のハッキリしないものが、もぞもぞ動くようす。
2 陰々と →→ 薄暗くものさびしいようす。
3 奇異な目 →→ (文脈)珍しく、ふしぎなものを見るような目。ここでは本文の「むしろ楽しげに」から「驚きとまどう」と言う否定的なニュアンスを読み取る。
・櫓(やぐら) →→ 材木などを組み合わせて高く作った構築物。
・徒労 →→ 無駄なことに力を費やすこと。また、骨を折ってしたことが報われないこと。
99(本)山田詠美『眠れる分度器』
1 固唾(かたず)を呑む →→ 事の成り行きをはらはらしながらじっと見守る。
2 休息を封印する →→ (文脈)教師は「尊厳に値するもの」というラベルを貼っている。「休息」はそのラベルを剝がし、教師に親しむことを指す。
3 現在進行形 →→ (文脈)前の文に「自分の現在は、常に未来のためのものだ」とある。大人になって教師に介入されず、自分のために生きられるようになることが「現在進行形」。
・ものにする →→ 思い通りのものにする。意図したように事を運び、なしとげる。
・忌(い)み嫌う →→ 憎みきらう。ひどくいやがる。
・依怙地(いこじ)さ →→ 意地っ張りでがんこなこと。
・見くびる →→ 軽く見てあなどる。見下す。
・媚(こび)を売る →→ 相手の機嫌をとる。=へつらう。
・いとおしい →→ 「相手がかわいそうだ」が基本だが、ここでは「愛情を感じる」意になる。
・かたくな →→ すなおに考えを変えず、一つのことを思い込むようす。頑固。
99(追)三浦哲郎『まばたき』
1 おしなべて →→ すべてにわたって等しく。=総じて。
2 眉をひそめる →→ 心配事や憂いごとがあったり、他人のいまわしい言動に不快を感じたりして、顔をしかめる(しわを寄せる)。=眉を寄せる(曇らす/しかめる)。
3 どぎまぎ →→ 不意をつかれたり、圧倒されたりして、うろたえあわてるようす。
・仰臥(ぎょうが) →→ あおむきに寝ること。
・しお(どき) →→ 物事を行うのに最も適する時。好機。
・ぼやく →→ ぶつぶつ不平を言う。泣きごとを言う。
・目を伏せる →→ 視線を相手から外し、下を向く。心を読まれたくない場合や気掛かりのある場合にする行動。
・たじろぐ →→ しりごみする。ひるむ。相手の勢いに押されるようす。
・はばかる →→ 遠慮する。
・ばつが悪い →→ (人前で上手く行動できず)きまりが悪い。なんとなく恥ずかしい。
・せつない →→ 悲しさ、寂しさ、恋しさなどで、胸がしめつけられるような気持である。=やるせない。
98(本)井上靖『姨捨』
1 小ざっぱりした →→ 清潔感があり、すっきりしていて見る者に快さを与えるようす。
2 端的 →→ 簡潔ながらポイントをとらえているようす。
3 どんより →→ 空や気持ちなどが、暗くにごったようす。
・嬌声(きょうせい) →→ 女性のなまめかしい声。
・厭世(えんせい) →→ 物事を悪い方向へばかり考え、世の中をいやなものだと見ること。
・いたわる →→ やさしく、大切にする。
・なじる →→ 問いつめて責める。非難する。
98(追)野間宏『顔の中の赤い月』
1 ほの暗い空間 →→ (文脈)「ほの」=「かすかに、わずかに」の意。「ほのかな」の「ほの」。
2 (衝動に)かられる →→ 強い感情にとらえられ、ある行動をせざるを得ない気持になること。
3 息吹(いぶき) →→ 息を吹くこと。呼吸。(比喩として)活気。生気。
・息づまる →→ 緊張のあまり息が苦しくなるように感じるようす。
・せきたてる →→ 催促して急がせる。
97(本)島崎藤村『夜明け前』
1 いつもと同じ調子で →→ (文脈)「農民一揆」が起きて様子を聞く場面でありながら、「いつもと同じ」だから、「平静さを装って」を選ぶ。
2 そんなら →→ (文脈)「そんなら(それなら)」という指示語の指す内容がヒント。具体的には兼吉の「そりゃ、うれしいどころじゃない」なので、「理解」を選ぶ。
3 本当のこと →→ (文脈)「本当のこと」は「百姓の生活の実態・本音」。この次の「そんなにおれは百姓を知らないかなあ。」という嘆きから考える。
・いとま →→ ある物事をするためにあけることのできる時間。くつろぐための自由な時間。
・粗野(そや) →→ ことばやふるまいなどがあらあらしく、洗練されていないようす。
・嘆息(たんそく) →→ なげいてためいきをつくこと。
97(追)丸山健二『雪間』
1 つける →→ (用法)原文は「とっくりを――」。ここでは「湯・水にひたす」の意。
2 打つ →→ (用法)原文は「寝返りを――」。ここでは「急激にひっくり返るような動作をする」の意。
3 (雪を)かく →→ (用法)集め寄せる。
・殺生(せっしょう) →→ 生き物を殺すこと。
・あからさま →→ 露骨なほどはっきりとしたようす。=ありのまま。
・風刺(ふうし) →→ あからさまな言葉ではなく、遠まわしな表現で相手の欠点をつくこと。
96(本)吉本ばなな『TSUGUMI』
1 水を差す →→ 上手くいっていることの邪魔をして、不調にする。*「批判」、「冷やかす」という意味はない。
2 唐突 →→ 突然に。不意に。
3 気骨(きこつ) →→ 自分の信じていることを、どんな障害にも負けないで貫こうとする強い心。気概。
*「きぼね」と読んだ場合は「気苦労・心配事」の意味になる。
・老成 →→ 実際の年齢に比べて、おとなびて落ちついたようす。
・果敢(かかん) →→ 決断力があり、大胆なようす。
・そらぞらしい →→ わざとらしい。
・媚(こび) →→ 人の顔色をうかがって、気に入るようにふるまうこと。女性の色っぽい態度。
96(追)石牟礼道子『言葉の秘境から』
1 けげん →→ (用法)わけが分からなくてなっとくがいかない様子。「怪訝」と書く。
2 あえか →→ (用法)かよわく、なよなよとしたさま。上品で美しいというニュアンスがある。
3 あどけない →→ (用法)(子供の態度、様子などが)無邪気で愛らしい。
・いじらしい →→ (かよわいものの懸命なようすが)痛々しくかわいそうで、心にしみる。
・せつない →→ 悲しさ、寂しさ、恋しさなどで、胸がしめつけられるような気持である。=やるせない。
・うつつ →→ (観念の世界に対して)現実。
95(本)伊藤整『典子の生きかた』
1 微笑みのかけらのような →→ (文脈)「かけら」は「ものの断片、ごくわずかなもの」。
2 肌が粟(あわ)立つような →→ (文脈)「粟立つ」は「鳥肌が立つ」に同じ。直前の「ぞっと」から決まる。
3 朝の草を飾る露のように →→ (文脈)「露」=「涙」であり、「悲しみ」ではない(対比)もの。その上でなぜ「朝の草を飾る露」にたとえたのか明瞭なものを選ぶ。
・渾身(こんしん)の力 →→ からだ全体を使った、ありったけの力。
・すがる →→ しっかりとつかまる。しがみつく。
・身の毛がよだつ →→ (恐怖や寒さで)ぞっとする。鳥肌が立つ。
・いさかい →→ 言い争うこと。いざこざ。
95(追)三木卓『鶸(ひわ)』
1 口をとがらせる →→ 口を前につき出して、不満そうな表情をする。激しい口調で言う。
2 戦慄(せんりつ)が走りぬける →→ 「戦慄」は「恐ろしくて身ぶるいすること」。
3 凛(りん)とした声 →→ 身の引きしまるような厳しい声。
・虐(さいな)む →→ いじめ、苦しめる。むごく当たる。*「虐」はふつう「しいた・げる」「いじ・める」と読む。「さいなむ」は「嘖む/苛む」
・忌々(いまいま)しい →→ 相手のいいようにされて腹立たしい。しゃくにさわる。
・羨望(せんぼう) →→ うらやましく思うこと。
・反芻(はんすう) →→ 繰り返し、よく味わったり、考えたりすること。
・なじる →→ 問いつめて責める。非難する。
・おずおず →→ こわくてためらっているようす。おそるおそる。おどおど。
・みすぼらしい →→ 姿がやつれている。貧しげである。
・毅然とした →→ 断固やりとげるという意志のあらわれた、しっかりしたようす。
94(本)司馬遼太郎『項羽と劉邦』
1 不世出(ふせいしゅつ)の →→ まれにしか世に現れないほど優れていること。
2 後難をおそれ →→ 将来のわざわい。「後世の非難」の意もあるが、ここでは無関係。
3 八方画策した →→ あらゆる方面に働きかけ、はかりごとをめぐらす。「画策」=「計略」。
・うしろめたい →→ やましいところがあって、気が引ける、
・忠心 →→ 主君や国家に対して、まごころを尽くそうとする心。
・愛嬌(あいきょう) →→ 好ましさ、こっけいさなどを人に感じさせる要素やしぐさ。*女性のかわいらしさに限らない。
・一笑する →→ 軽く笑うこと。また、笑ってとりあおうとしないこと。
・けん制 →→ 敵対する相手ににらみをきかせて、自由な行動をとらせないようにすること。
・そそのかす →→ その気になるようにしむける。おだてて悪い方へさそう。
94(追)上林暁『不思議の国』
1 自弁 →→ 自分で費用を負担すること。
2 久闊(きゅうかつ)を叙する →→ 久しぶりの挨拶をし、無沙汰をわびる。久しぶりに友情をあたためる。
3 余念なく →→ ほかのことを考えないで。一心に。
・吝嗇家(りんしょくか) →→ 過度に物惜しみをする人。けち。
・憂(う)き身を窶(やつ)す →→ そのことにうち込んで、やせるほどに思い悩む。
・すさむ →→ 荒れる。荒廃する。
93(本)阿部昭『司令の休暇』
1 腰が低い →→ 他人に対して謙虚である。偉ぶったようすがない。
2 渾身の力 →→ からだ全体の力。全力。*「渾」は「すべて」の意。
3 物心つく →→ 世の中の決まりごとや、人情などを理解する。分別ができる。
・うかうか →→ 深い考えがなく、不注意な行動をするようす。=うかつ。
・狼狽(ろうばい) →→ どうしてよいかわからず、あわてること。
・うろたえる →→ 驚きのあまり、どうしてよいか分からずまごまごする。
・迂闊(うかつ) →→ 心が行き届かないこと。注意が足りないさま。
・茫然(ぼうぜん) →→ あっけにとられたり、気抜けしたりしてぼんやりするようす。
・反語 →→ 伝えたい本心と、言葉をわざと逆にして、本心をほのめかす表現。問5の選択肢(2)では「逆の意味に受け取れてしまう」くらいの意。
93(追)福永武彦『忘却の川』
1 うろ覚え →→ 不確かな記憶。ぼんやりと覚えていること。
2 押し問答 →→ お互いに言い張って自分の立場を譲ろうとしないこと。
3 無量の想い →→ 「無量」は「はかりしれなく大きいこと」の意。計り知れないほど大きい思い。
・悼(いた)む →→ 人の死を嘆き悲しむ。
・形骸(けいがい)化 →→ 内容のない、外形だけのものになること。
・おののく →→ 恐れてふるえる。わななく。戦慄せんりつする。*「戦慄く/戦く」と書く。
・拘泥(こうでい) →→ ものごとにこだわること。なにかを必要以上に気にしてそれにとらわれること。
92(本)幸田文『おとうと』
1 屈託(くったく)ない →→ こだわりや心配がなくのびのびしたようす。「屈託」はなにかを気にかけてくよくよすること。次文に「のんき」とあるのもヒント。
2 他意ない →→ 「他意」は「言葉よりほかの考え」の意。ここでは特に「他人にさとられぬよう隠している考え」=「裏」というニュアンスが出ている。
3 躍起(やっき)になる →→ むきになって熱心になる。気持ちがせいて、いらいらする。
・のんき →→ 気分や性格がのんびりしていて、周りにあまり気をつかわないこと。
・こわらしい →→ いかにもおそろしい感じである。
・あっけにとられる →→ 思いがけないことに出会って驚きあきれる。漢字で書くと「呆気」。
・疎(うと)ましい →→ 自分から遠ざけたい、かかわりたくないなどの嫌悪の気持を表わす。
・行き掛かり →→ 物事のはずみ。なりゆき。
92(追)室生犀星『幼年時代』
1 森厳(しんげん) →→ 秩序正しくおごそかなさま。きわめて厳粛であるさま。*神聖なようす。
2 長じる(ずる) →→ しだいに成長する。
3 あがなう →→ (表記は「購」)購入すること。何かを代償として他の何かを手に入れることをいう、改まった言い方。*「罪の償いをする」の意になる時は「贖う」と表記する。
・厳粛(げんしゅく) →→ (尊いものを前にした時の)おごそかで心が引きしまるようす。真剣なようす。
・雅語(がご) →→ 洗練された優美なことば。
・不遜(ふそん) →→ おごりたかぶっているようす。=傲慢。
・敬虔(けいけん) →→ 神仏をうやまいつかえること。
91(本)夏目漱石『道草』
1 異数の取り扱い →→ 他に例のないこと。異例。
2 年歯(としは)の行かない →→ まだ年齢が幼い。本文では「幼いために判断力が未熟なこと」を問うている。「年端」とも。
3 歓心を得る →→ 人の気に入るようにつとめる。人の機嫌をとる。=「歓心を買う」
・吝嗇(りんしょく) →→ 過度に物惜しみをすること。自分が損することを恐れてお金やものを出そうとしないこと。けち。
・時代を着ける →→ 「時代」とは、古びた、使い込んだようす。道具は新品ではなく古い方が価値があった。
・頓着(とんじゃく) →→ 気にかけること。執着すること。よみは「とんちゃく」とも。
・忌(い)む →→ 嫌悪すること。激しく嫌うこと。
・束縛(そくばく) →→ 外から制限をつけて、行動の自由を奪うこと。
90(本)北杜夫『幽霊』
1 几帳面(きちょうめん)な →→ 決まりや約束にきちんと合っているようす。
2 ぶっつけに →→ あらかじめ準備などをしないで、いきなり実行に移すこと。
3 放心 →→ まるで魂が抜けたようにぼんやりして、周りの状況に対する判断力を失ったようす。
・憂鬱(ゆううつ) →→ 気分が晴れず、重苦しい気持ち。
・自負 →→ 他人の評価がどうであっても、自分の才能や能力などを自分自身で高く評価すること。
・無雑作(むぞうさ) →→ あれこれと細かい技巧をこらさずに。ここでは「大胆」に近いニュアンス。「無造作」とも書く。
そこで、多くの受験生が受験するセンター試験の文章をもとにして「小説用語」を整理してみました。この場合、例文はセンター試験の問題文そのものです。センター対策と「小説用語」対策(↑エッセイでもよく出ますよ)の一石二鳥を狙いましょう。
08(本)夏目漱石『彼岸過迄』
1 名状(めいじょう)し難(がた)い →→ 言葉で表現することが難しい。「名状」は言葉で言い表すこと。
2 眉を暗くした →→ (文脈)直前に「ますます」とあることに注目すると、それまで表れていた心情が強まっているのだとわかる。「嫉妬心」を抱いて「不快」で「苦悶」しているという場面なのだから、「不愉快」だということは明らか。なお、「眉を曇らす」は「心配そうな顔つきをする」の意。
3 気の置けない →→ 遠慮がいらず、気楽につきあえる。(対)気が(の)置ける
・回顧(かいこ) →→ 後になって過去のできごとを振り返ってみること。
・僻(ひが)み →→ 劣等感や引け目から、ものごとを自分に不利なようにゆがめて受け取ること。
・太平に →→ のんきに。思いわずらうことなくのびのびと。
・殊(こと)に →→ とりわけ。他のものからはっきりと区別して。
・偏屈(へんくつ) →→ 気むずかしく、他人の言うことに素直に同調しないようす。
・焦燥(もどか)しがらせる →→ 思い通りにならず、イライラさせる。「焦燥しい」は一般的表記ではなく当時の当て字。
・欺(あざむ)く →→ 真実ではないことを、真実だと思わせる。
07(本)堀江敏幸『送り火』
1 老成した →→ 年齢のわりに落ち着いていること。
2 不意をつかれて →→ 予期していないことに出会って。文脈上は直後の「顔を見合わせた」から「意外さ」が出ている選択肢を選ぶ。
3 教室の体裁(ていさい)をなし →→ 「体裁」は、内容を問わず、外見がそれらしいかどうかということ。
・還暦(かんれき) →→ 満六十歳のこと。干支の一巡りが六十年かかることから言う。
・連鎖(れんさ) →→ 物事が互いに結びついてつながっていること。
・はぐらかす →→ 話の中心をわざとずらしたり、あいまいにしたりして、追及から逃れようとすること。
06(本)松村栄子『僕はかぐや姫』
1 身の丈に合っていた →→ 「身の丈に合う」とは、自分のありようにぴったりくること。文脈上は直前の「おとなびた言葉よりは」という対比表現をヒントにする。
2 おずおずとした調子 →→ 「おずおず」は、ためらうような調子。恐れや不安からおっかなびっくり進めるようす。
3 一矢(いっし)を報いずには →→ 「一矢を報いる」とは、相手の攻撃に対して勝てないまでもやり返す、の意。
・世をすねる →→ 世間の価値観や決まりに対して納得できず、反抗したり背を向けたりすること。
・媚(こび)る →→ 相手に気に入られようとして、相手の喜びような態度をとること。=へつらう
・冷笑(れいしょう) →→ 相手を見下してあざ笑うこと。
・かたくな →→ 漢字にすると「頑な」。意地を張って自分の考えや態度を変えようとしないようす。
・隠蔽(いんぺい) →→ 人に知られないように覆い隠そうとすること。
・真摯(しんし) →→ 真面目で一生懸命なようす。
・抹消(まっしょう) →→ 消し去ること。
・庇護(ひご) →→ 弱いものを守ること。
・毅然(きぜん) →→ 意志が強く、周りのものに動じないようす。
・疎(うと)ましい →→ 好きになれず、遠ざけたい。
05(本)遠藤周作『肉親再開』
1 安易な声を聞いた →→ (文脈)「安易な声」の内容は、主人公のその後の行動から芸術を捨てることだとわかる。
2 たむろする →→ 群れ集まること。選択肢には文脈上の意味として「自分の夢を求め」が加わっている。
3 償われなくったって →→ (文脈)直前の「結果ではないじゃないの」より「償い」=「報われること」とわかる。
・憂鬱(ゆううつ) →→ 気が晴れず重苦しい気持ち。
・人いきれ →→ 人が多く集まっているため、そのにおいや熱気が強く立ちこめていること。漢字では「人熱(いき)れ」。
05(追)水村美苗(みなえ)『本格小説』
1 あたりの空気が闇を集め →→ (文脈)直前の「時間を忘れて遊んでいると突然」街灯がつくという描写と、「すると(順接)」で結ばれていることに注目すれば、この「闇」は街灯が生んだものだとわかる。
2 憑物(つきもの)が落ちた →→ 興奮など我を忘れるような状態が過ぎ、ふだんのようすに返った。
3 目を瞠(みは)った →→ 驚いたり感心したりして、目を大きく見開いた。
・昂揚感(こうようかん) →→ 精神や気分が高まること。
・摂理(せつり) →→ 自然界を支配している、人間の理解を超えた法則。
・恩寵(おんちょう) →→ 神や主君などが与える愛や恵み。
・書きあぐねる →→ 努力してもなかなか書くことができない。「~あぐねる」で「努力しても上手くいかない」の意。
・疎(うと)んじる →→ 気に入らないで、遠ざけようとする。よそよそしい態度をとる。
・当惑(とうわく) →→ どうしてよいかわからず、困り果てること。
・ひるむ →→ 相手の勢いや困難に直面して、しり込みしてしまう。
04(本)森鴎外(おうがい)『護持院原(ごじいんがはら)の敵討(かたきうち)』
1 恨(うら)みを呑(の)む →→ 無念な気持ち(=恨み)を心中に抱く。
2 是非に及ばない →→ 良いか悪いかを論じるまでもなく、そうせざるをえない。やむを得ない。
3 宥(なだ)め賺(すか)す →→ 機嫌をとって、こちらの都合よいように相手の気を変えさせる。
・暇(いとま) →→ 用事のない時間。そこから「お休み」や「職を離れる」や「離婚する』の意味になる。
・按排(あんばい)=按配・塩梅 →→ ものごとのようす。調子。
・のたれ死に →→ 道で行き倒れ、そのまま死ぬこと。
・能弁(のうべん) →→ 話し方がなめらかで上手なこと。
・手を拱(こまぬ)く →→ 腕を組むこと。そこから「何もしないでいること」、「傍観すること」の意味になる。
・発揚(はつよう) →→ 気持ちが高まること。意気が盛んになること。
・僥倖(ぎょうこう) →→ 幸運。特にあてにしても得られないような、思いがけないもの。
・嘲(あざけ)る →→ 馬鹿にして笑う。
04(追)三島由紀夫『剣』
1 率先垂範(そっせんすいはん) →→ 人の先に立って手本を示すこと。「率先=先だって行う」+「垂範=模範を示す」
2 些末(さまつ)な事柄 →→ 重要ではない、取るに足りないことがら。「瑣末」とも書く。=些細(ささい)な事柄
3 折り曲げて見る →→ (文脈)「折り曲げる」は比喩で、「ものごとを単純に見ない」くらいの意味。
・鬱然(うつぜん) →→ 樹木がこんもりと茂っているようす。本文では筋肉がたくましく盛り上がっていること。
・傲慢(ごうまん) →→ 自分の優位に思い上がって、相手を馬鹿にしたり身勝手な振る舞いをしたりするようす。
・やりきれない →→ 不快さや精神的な苦痛をがまんできない。
・ねぎらう →→ 目下の者の苦労や骨折りに対して感謝やなぐさめの言葉をかけること。
・寡黙(かもく) →→ 無口なこと、何も言わないこと。
・嘲笑(ちょうしょう) →→ 相手を馬鹿にして、見下すような笑い方をすること。
03(本)野呂邦暢『白桃』
1 心得(こころえ)顔 →→ いかにも事情をよく理解しているといった、得意そうな顔つき。
2 のっぴきならない →→ 避けることも、引き下がることもできない。抜き差しならない。「退っ引きならない」と書く。
3 たたずまい →→ 自然に伝わってくる雰囲気。ようす。ありさま。
・気むずかしい →→ 自分の考えにこだわり、他人とうちとけない。
・道理 →→ 物事が正しくすじみちだっていること。
・みくびる →→ 相手の実力を軽く見る。あなどる。
・けんまく →→ 怒ったときの、荒々しく恐ろしい顔つきや態度。
・面目めんぼく →→ 世間からうける評価。体面。
03(追)伊藤桂一『溯(のぼ)り鮒(ぶな)』
1 小康 →→ 病勢の悪化がとまり、ややよい状態で落ち着いていること。
2 醸(かも)す →→ ある雰囲気や状態をつくりだす。「物議を―・す」
3 駆る →→ (むりに)ある行動を取らせる。追い立てる。*文脈上は「せいいっぱい」というニュアンスになっている。
・安堵(あんど) →→ 安心し、心が落ち着くこと。
・憔悴(しょうすい) →→ 病気や心労が原因でやせおとろえること。
・鬱蒼(うっそう)と →→ 草や木がこんもりと茂り、うすぐらいようす。
・饒舌(じょうぜつ) →→ 口数が多いこと。=おしゃべり。
・駘蕩(たいとう) →→ おだやかでのびのびしたようす。
02(本)太宰治『故郷』
1 閉口する →→ いやになること。困ること。↓原義は「口を閉ざすこと」。場面によって意味が変わることに注意。
2 難物 →→ 扱いにくい人物。やっかいな人。
3 具合が悪い →→ 他と適合していない様子。つごうや、体面が悪いこと。
・かぶりを振る →→ 頭(=かぶり)を左右に振って、否定や不承知をあらわす。
・思わせぶり →→ 何か意味がありそうに人に見せかける言葉や態度。
・嗚咽おえつ →→ 声をおさえて(うっうっという音を立てて)泣くこと。むせびなくこと。
・ものものしい →→ いかめしく、おおげさなようす。
・はばかられる →→ (相手との間に不都合があるので)恐れつつしむ。遠慮する。
・情にほだされる →→ 相手の情にひきつけられて心や行動の自由が縛られる。
・悶着(もんちゃく) →→ 争いごと。もめごと。いさかい。
・健気(けなげ) →→ (弱いものが)一生懸命につとめる様子。
・饒舌(じょうぜつ) →→ よくしゃべること。
02(追)池澤夏樹『スティル・ライフ』
1 もちかける →→ 話などを持ち出す。
2 口をはさむ →→ 人が話している途中で横から何かをいう。
3 しかるべき →→ 適当な。ふさわしい。
・つじつまが合う →→ すじみちがよく通る。前後が矛盾しない。
・たしなめる →→ (目上の人が目下の人に対して)それはいけないことだと注意を与える。
01(本)津島佑子『水辺』
1 声を漏(も)らす →→ うっかり声をあげてしまう。
2 気を呑まれる →→ 思いがけない様子にあっけにとられる。
3 自分の目を疑う →→ 自分の見たものが信じられないほど意外である。
・くるぶし →→ 足首の両側にある骨の突起。
・しどろもどろ →→ 言葉や話の内容にまとまりがなく、あいまいなようす。
・いじらしい →→ か弱いものが懸命なようすが痛々しく同情される。けなげだ。
01(追)色川武大『雀』
1 邪気(じゃき)を殺す →→ (文脈)本文では「無/邪気なふりをする」の意。「大人の手前」/「健全に答えたにすぎない」とある部分から、問題文中の意味を決める。
2 喉(のど)を通りにくい →→ (文脈)「喉を通る」=「呑みこむ」には、「受け入れる」のニュアンスがある。よって「受け入れにくい」、「理解しにくい」。
3 目を寄越す →→ (文脈)比喩表現。「目線」を、「先方からこちらに送ってくる」の意。
・狂奔(きょうほん) →→ ある事に夢中になってそのために走り回ること。
・牛耳(ぎゅうじ)る →→ 中心となって人や組織を意のままに動かす。
・常套句(じょうとうく) →→ 同じような場合にいつも決まって用いる言葉。決まり文句。
・折衷(せっちゅう) →→ 両方のよいところをとってほどよく調和させること。
・ナイーブ →→ 純真で感じやすい性質であるさま。
・見まがう →→ 見誤ること。
00(本)堀辰雄『鼠(ねずみ)』
1 よい嗅覚 →→ (文脈)嗅覚はにおいに刺激されて起こる感覚。そこから「ささいなものを見つけ出す鋭い感覚」の意になる。
2 驚くべき自尊心 →→ (文脈)「自尊心」は「プライド」で、「自分の人格の独立を守り、品位を保とうとする気持ち」のこと。
3 さめざめと →→ しきりに涙を流して静かに泣くようす。
・とり繕(つく)ろう →→ ぼろの出ないようにことばをかざったり、うまくふるまったりする。
・夢うつつ →→ 夢か現実かはっきりしない、ばくぜんとした意識の状態。
・エピソード →→ 物語の途中にさしはさまれる、まとまった話。挿話。
00(追)日野啓三『風を讚えよ』
1 うごめき →→ 全体がいつも少しずつ動いているようす。虫や正体のハッキリしないものが、もぞもぞ動くようす。
2 陰々と →→ 薄暗くものさびしいようす。
3 奇異な目 →→ (文脈)珍しく、ふしぎなものを見るような目。ここでは本文の「むしろ楽しげに」から「驚きとまどう」と言う否定的なニュアンスを読み取る。
・櫓(やぐら) →→ 材木などを組み合わせて高く作った構築物。
・徒労 →→ 無駄なことに力を費やすこと。また、骨を折ってしたことが報われないこと。
99(本)山田詠美『眠れる分度器』
1 固唾(かたず)を呑む →→ 事の成り行きをはらはらしながらじっと見守る。
2 休息を封印する →→ (文脈)教師は「尊厳に値するもの」というラベルを貼っている。「休息」はそのラベルを剝がし、教師に親しむことを指す。
3 現在進行形 →→ (文脈)前の文に「自分の現在は、常に未来のためのものだ」とある。大人になって教師に介入されず、自分のために生きられるようになることが「現在進行形」。
・ものにする →→ 思い通りのものにする。意図したように事を運び、なしとげる。
・忌(い)み嫌う →→ 憎みきらう。ひどくいやがる。
・依怙地(いこじ)さ →→ 意地っ張りでがんこなこと。
・見くびる →→ 軽く見てあなどる。見下す。
・媚(こび)を売る →→ 相手の機嫌をとる。=へつらう。
・いとおしい →→ 「相手がかわいそうだ」が基本だが、ここでは「愛情を感じる」意になる。
・かたくな →→ すなおに考えを変えず、一つのことを思い込むようす。頑固。
99(追)三浦哲郎『まばたき』
1 おしなべて →→ すべてにわたって等しく。=総じて。
2 眉をひそめる →→ 心配事や憂いごとがあったり、他人のいまわしい言動に不快を感じたりして、顔をしかめる(しわを寄せる)。=眉を寄せる(曇らす/しかめる)。
3 どぎまぎ →→ 不意をつかれたり、圧倒されたりして、うろたえあわてるようす。
・仰臥(ぎょうが) →→ あおむきに寝ること。
・しお(どき) →→ 物事を行うのに最も適する時。好機。
・ぼやく →→ ぶつぶつ不平を言う。泣きごとを言う。
・目を伏せる →→ 視線を相手から外し、下を向く。心を読まれたくない場合や気掛かりのある場合にする行動。
・たじろぐ →→ しりごみする。ひるむ。相手の勢いに押されるようす。
・はばかる →→ 遠慮する。
・ばつが悪い →→ (人前で上手く行動できず)きまりが悪い。なんとなく恥ずかしい。
・せつない →→ 悲しさ、寂しさ、恋しさなどで、胸がしめつけられるような気持である。=やるせない。
98(本)井上靖『姨捨』
1 小ざっぱりした →→ 清潔感があり、すっきりしていて見る者に快さを与えるようす。
2 端的 →→ 簡潔ながらポイントをとらえているようす。
3 どんより →→ 空や気持ちなどが、暗くにごったようす。
・嬌声(きょうせい) →→ 女性のなまめかしい声。
・厭世(えんせい) →→ 物事を悪い方向へばかり考え、世の中をいやなものだと見ること。
・いたわる →→ やさしく、大切にする。
・なじる →→ 問いつめて責める。非難する。
98(追)野間宏『顔の中の赤い月』
1 ほの暗い空間 →→ (文脈)「ほの」=「かすかに、わずかに」の意。「ほのかな」の「ほの」。
2 (衝動に)かられる →→ 強い感情にとらえられ、ある行動をせざるを得ない気持になること。
3 息吹(いぶき) →→ 息を吹くこと。呼吸。(比喩として)活気。生気。
・息づまる →→ 緊張のあまり息が苦しくなるように感じるようす。
・せきたてる →→ 催促して急がせる。
97(本)島崎藤村『夜明け前』
1 いつもと同じ調子で →→ (文脈)「農民一揆」が起きて様子を聞く場面でありながら、「いつもと同じ」だから、「平静さを装って」を選ぶ。
2 そんなら →→ (文脈)「そんなら(それなら)」という指示語の指す内容がヒント。具体的には兼吉の「そりゃ、うれしいどころじゃない」なので、「理解」を選ぶ。
3 本当のこと →→ (文脈)「本当のこと」は「百姓の生活の実態・本音」。この次の「そんなにおれは百姓を知らないかなあ。」という嘆きから考える。
・いとま →→ ある物事をするためにあけることのできる時間。くつろぐための自由な時間。
・粗野(そや) →→ ことばやふるまいなどがあらあらしく、洗練されていないようす。
・嘆息(たんそく) →→ なげいてためいきをつくこと。
97(追)丸山健二『雪間』
1 つける →→ (用法)原文は「とっくりを――」。ここでは「湯・水にひたす」の意。
2 打つ →→ (用法)原文は「寝返りを――」。ここでは「急激にひっくり返るような動作をする」の意。
3 (雪を)かく →→ (用法)集め寄せる。
・殺生(せっしょう) →→ 生き物を殺すこと。
・あからさま →→ 露骨なほどはっきりとしたようす。=ありのまま。
・風刺(ふうし) →→ あからさまな言葉ではなく、遠まわしな表現で相手の欠点をつくこと。
96(本)吉本ばなな『TSUGUMI』
1 水を差す →→ 上手くいっていることの邪魔をして、不調にする。*「批判」、「冷やかす」という意味はない。
2 唐突 →→ 突然に。不意に。
3 気骨(きこつ) →→ 自分の信じていることを、どんな障害にも負けないで貫こうとする強い心。気概。
*「きぼね」と読んだ場合は「気苦労・心配事」の意味になる。
・老成 →→ 実際の年齢に比べて、おとなびて落ちついたようす。
・果敢(かかん) →→ 決断力があり、大胆なようす。
・そらぞらしい →→ わざとらしい。
・媚(こび) →→ 人の顔色をうかがって、気に入るようにふるまうこと。女性の色っぽい態度。
96(追)石牟礼道子『言葉の秘境から』
1 けげん →→ (用法)わけが分からなくてなっとくがいかない様子。「怪訝」と書く。
2 あえか →→ (用法)かよわく、なよなよとしたさま。上品で美しいというニュアンスがある。
3 あどけない →→ (用法)(子供の態度、様子などが)無邪気で愛らしい。
・いじらしい →→ (かよわいものの懸命なようすが)痛々しくかわいそうで、心にしみる。
・せつない →→ 悲しさ、寂しさ、恋しさなどで、胸がしめつけられるような気持である。=やるせない。
・うつつ →→ (観念の世界に対して)現実。
95(本)伊藤整『典子の生きかた』
1 微笑みのかけらのような →→ (文脈)「かけら」は「ものの断片、ごくわずかなもの」。
2 肌が粟(あわ)立つような →→ (文脈)「粟立つ」は「鳥肌が立つ」に同じ。直前の「ぞっと」から決まる。
3 朝の草を飾る露のように →→ (文脈)「露」=「涙」であり、「悲しみ」ではない(対比)もの。その上でなぜ「朝の草を飾る露」にたとえたのか明瞭なものを選ぶ。
・渾身(こんしん)の力 →→ からだ全体を使った、ありったけの力。
・すがる →→ しっかりとつかまる。しがみつく。
・身の毛がよだつ →→ (恐怖や寒さで)ぞっとする。鳥肌が立つ。
・いさかい →→ 言い争うこと。いざこざ。
95(追)三木卓『鶸(ひわ)』
1 口をとがらせる →→ 口を前につき出して、不満そうな表情をする。激しい口調で言う。
2 戦慄(せんりつ)が走りぬける →→ 「戦慄」は「恐ろしくて身ぶるいすること」。
3 凛(りん)とした声 →→ 身の引きしまるような厳しい声。
・虐(さいな)む →→ いじめ、苦しめる。むごく当たる。*「虐」はふつう「しいた・げる」「いじ・める」と読む。「さいなむ」は「嘖む/苛む」
・忌々(いまいま)しい →→ 相手のいいようにされて腹立たしい。しゃくにさわる。
・羨望(せんぼう) →→ うらやましく思うこと。
・反芻(はんすう) →→ 繰り返し、よく味わったり、考えたりすること。
・なじる →→ 問いつめて責める。非難する。
・おずおず →→ こわくてためらっているようす。おそるおそる。おどおど。
・みすぼらしい →→ 姿がやつれている。貧しげである。
・毅然とした →→ 断固やりとげるという意志のあらわれた、しっかりしたようす。
94(本)司馬遼太郎『項羽と劉邦』
1 不世出(ふせいしゅつ)の →→ まれにしか世に現れないほど優れていること。
2 後難をおそれ →→ 将来のわざわい。「後世の非難」の意もあるが、ここでは無関係。
3 八方画策した →→ あらゆる方面に働きかけ、はかりごとをめぐらす。「画策」=「計略」。
・うしろめたい →→ やましいところがあって、気が引ける、
・忠心 →→ 主君や国家に対して、まごころを尽くそうとする心。
・愛嬌(あいきょう) →→ 好ましさ、こっけいさなどを人に感じさせる要素やしぐさ。*女性のかわいらしさに限らない。
・一笑する →→ 軽く笑うこと。また、笑ってとりあおうとしないこと。
・けん制 →→ 敵対する相手ににらみをきかせて、自由な行動をとらせないようにすること。
・そそのかす →→ その気になるようにしむける。おだてて悪い方へさそう。
94(追)上林暁『不思議の国』
1 自弁 →→ 自分で費用を負担すること。
2 久闊(きゅうかつ)を叙する →→ 久しぶりの挨拶をし、無沙汰をわびる。久しぶりに友情をあたためる。
3 余念なく →→ ほかのことを考えないで。一心に。
・吝嗇家(りんしょくか) →→ 過度に物惜しみをする人。けち。
・憂(う)き身を窶(やつ)す →→ そのことにうち込んで、やせるほどに思い悩む。
・すさむ →→ 荒れる。荒廃する。
93(本)阿部昭『司令の休暇』
1 腰が低い →→ 他人に対して謙虚である。偉ぶったようすがない。
2 渾身の力 →→ からだ全体の力。全力。*「渾」は「すべて」の意。
3 物心つく →→ 世の中の決まりごとや、人情などを理解する。分別ができる。
・うかうか →→ 深い考えがなく、不注意な行動をするようす。=うかつ。
・狼狽(ろうばい) →→ どうしてよいかわからず、あわてること。
・うろたえる →→ 驚きのあまり、どうしてよいか分からずまごまごする。
・迂闊(うかつ) →→ 心が行き届かないこと。注意が足りないさま。
・茫然(ぼうぜん) →→ あっけにとられたり、気抜けしたりしてぼんやりするようす。
・反語 →→ 伝えたい本心と、言葉をわざと逆にして、本心をほのめかす表現。問5の選択肢(2)では「逆の意味に受け取れてしまう」くらいの意。
93(追)福永武彦『忘却の川』
1 うろ覚え →→ 不確かな記憶。ぼんやりと覚えていること。
2 押し問答 →→ お互いに言い張って自分の立場を譲ろうとしないこと。
3 無量の想い →→ 「無量」は「はかりしれなく大きいこと」の意。計り知れないほど大きい思い。
・悼(いた)む →→ 人の死を嘆き悲しむ。
・形骸(けいがい)化 →→ 内容のない、外形だけのものになること。
・おののく →→ 恐れてふるえる。わななく。戦慄せんりつする。*「戦慄く/戦く」と書く。
・拘泥(こうでい) →→ ものごとにこだわること。なにかを必要以上に気にしてそれにとらわれること。
92(本)幸田文『おとうと』
1 屈託(くったく)ない →→ こだわりや心配がなくのびのびしたようす。「屈託」はなにかを気にかけてくよくよすること。次文に「のんき」とあるのもヒント。
2 他意ない →→ 「他意」は「言葉よりほかの考え」の意。ここでは特に「他人にさとられぬよう隠している考え」=「裏」というニュアンスが出ている。
3 躍起(やっき)になる →→ むきになって熱心になる。気持ちがせいて、いらいらする。
・のんき →→ 気分や性格がのんびりしていて、周りにあまり気をつかわないこと。
・こわらしい →→ いかにもおそろしい感じである。
・あっけにとられる →→ 思いがけないことに出会って驚きあきれる。漢字で書くと「呆気」。
・疎(うと)ましい →→ 自分から遠ざけたい、かかわりたくないなどの嫌悪の気持を表わす。
・行き掛かり →→ 物事のはずみ。なりゆき。
92(追)室生犀星『幼年時代』
1 森厳(しんげん) →→ 秩序正しくおごそかなさま。きわめて厳粛であるさま。*神聖なようす。
2 長じる(ずる) →→ しだいに成長する。
3 あがなう →→ (表記は「購」)購入すること。何かを代償として他の何かを手に入れることをいう、改まった言い方。*「罪の償いをする」の意になる時は「贖う」と表記する。
・厳粛(げんしゅく) →→ (尊いものを前にした時の)おごそかで心が引きしまるようす。真剣なようす。
・雅語(がご) →→ 洗練された優美なことば。
・不遜(ふそん) →→ おごりたかぶっているようす。=傲慢。
・敬虔(けいけん) →→ 神仏をうやまいつかえること。
91(本)夏目漱石『道草』
1 異数の取り扱い →→ 他に例のないこと。異例。
2 年歯(としは)の行かない →→ まだ年齢が幼い。本文では「幼いために判断力が未熟なこと」を問うている。「年端」とも。
3 歓心を得る →→ 人の気に入るようにつとめる。人の機嫌をとる。=「歓心を買う」
・吝嗇(りんしょく) →→ 過度に物惜しみをすること。自分が損することを恐れてお金やものを出そうとしないこと。けち。
・時代を着ける →→ 「時代」とは、古びた、使い込んだようす。道具は新品ではなく古い方が価値があった。
・頓着(とんじゃく) →→ 気にかけること。執着すること。よみは「とんちゃく」とも。
・忌(い)む →→ 嫌悪すること。激しく嫌うこと。
・束縛(そくばく) →→ 外から制限をつけて、行動の自由を奪うこと。
90(本)北杜夫『幽霊』
1 几帳面(きちょうめん)な →→ 決まりや約束にきちんと合っているようす。
2 ぶっつけに →→ あらかじめ準備などをしないで、いきなり実行に移すこと。
3 放心 →→ まるで魂が抜けたようにぼんやりして、周りの状況に対する判断力を失ったようす。
・憂鬱(ゆううつ) →→ 気分が晴れず、重苦しい気持ち。
・自負 →→ 他人の評価がどうであっても、自分の才能や能力などを自分自身で高く評価すること。
・無雑作(むぞうさ) →→ あれこれと細かい技巧をこらさずに。ここでは「大胆」に近いニュアンス。「無造作」とも書く。
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