第2章=構文力――SОVの剣を使いこなす【ステップ2】

 次はSOV型の文を切り分ける練習をしてみましょう。

 【ステップ2】

1との違いは、「主語」と「述語」だけでは言葉が足りないことです。

例えば、「僕は好きだ」と言ったら、「何を(何が)?」と問い返されるでしょう。「何を」をちゃんと説明して、初めてこちらの言いたいことが相手に伝わります。

この「何を」に当たる言葉を、英文法から拝借して「目的語(Oと略します)」と呼ぶことにします。SVだけでは意味がわかりにくいとき、私たちは不足した言葉を探さなくてはいけません。ここでは「SOV型の文」を中心に、不足したものを見つける練習をして行きましょう。

 

  • 問題2

次の文の主語の後ろと述語の前に「/(スラッシュ)」を入れなさい。

 

1 われわれは この 戦いで 一人の 英雄を 失った。

2 島崎は 遭難した人に 必ず 「また山へおいでよ」と 言う。

3 巨大な 謎の ロボットが 20世紀末に 新宿の 町を 破壊した。

4 ネガティヴな 考え方の 先生は 自分の 存在価値をも 否定している。

5 森田さんは 甘くて しょっぱい ハニーピーナッツが 好きだ。

 

 

(問題2 解答と解説/SOV型の文を中心に)

問題は主に「SOV型の文」について問うています。

「目的語(O)」は、「~を」あるいは「~に」という形になっており、それほど見つけにくいわけではありませんが、ときどきまぎらわしい場合があるので注意が必要です。

 

1 われわれは/この 戦いで 一人の 英雄を/失った。

→「われわれは」が主語で、「失った」が述語。

2 島崎は/遭難した人に 必ず 「また山へおいでよ」と/言う。

→「島崎は」が主語で、「言う」が述語。

3 巨大な 謎の ロボットが/20世紀末に 新宿の 町を/破壊した。

→「ロボットが」が主語で、「破壊した」が述語。

4 ネガティヴな 考え方の 先生は/自分の 存在価値をも/認めない。

→「先生は」が主語で、「認めない」が述語。

5 森田さんは/甘くて しょっぱい ハニーピーナッツが/好きだ。

→「森田さんは」が主語で、「好きだ」が述語。

 

 

  • 問題2+1

ところで、このトレーニングでは「SVだけでは足りないものを見つける」ことが狙いでした。ここで先ほどの問題をもう一度見てください。それぞれのSVが確定したのに、それだけではなんとなく意味がぼんやりしているでしょう?

こんどは、その文の骨組みを作るのに不足しているものを、見つけてみましょう。それぞれの文の( )にある問いに答えてください。


 

1 われわれは/この 戦いで 一人の 英雄を/失った。

(失ったものは何?)

2 島崎は/遭難した人に 必ず 「また山へおいでよ」と/言う。

(言う相手は誰?)

3 巨大な 謎の ロボットが/20世紀末に 新宿の 町を/破壊した。

(破壊したのは何?)

4 ネガティヴな 考え方の 先生は/自分の 存在価値をも/認めない。

(認めないものは何?)

5 森田さんは/甘くて しょっぱい ハニーピーナッツが/好きだ。

(好きなものは何?)

 

 

 

(問題2+1 解答と解説)

 

1 →「英雄を」。「われわれは」、「英雄を」、「失った」が骨組みです。

2 →「遭難した人に」。「島崎は」、「遭難した人に」、「言う」が骨組みです。

3 →「町を」。「ロボットが」、「町を」、「破壊した」が骨組みです。

4 →「存在価値をも」。「先生は」、「存在価値をも」、「認めない」が骨組みです。

#「存在価値を・も」の「も」は、主語・目的語関係なくくっつくので、述語から意味を考えないとわかりにくい。

5 →「ハニーピーナッツが」。「森田さんは」、「ハニーピーナッツが」、「好きだ」が骨組みです。

#「~が」のつく言葉がいつも主語というわけではなく、この「ハニーピーナッツが」は「ハニーピーナッツを」と言いかえられるから、意味上は目的語と見てよい。

 

(補足/SOVとSCV)

ところで、「われわれは失った」だけではなく、「私はなります」という言い方でも、同じように「何に?」と反問されますよね。こちらも、SOVと同じく不足していることがらの説明が必要になるでしょう。この不足しているものを、やはり英語から借用して「補語(Cと略します)」と呼びます。

「目的語(O)」と「補語(C)」はどちらもSVを補うような働きをしていますが、両者の違いは、「主語」から見て自分と同じ(これが「補語」)か、それとも自分とは別(これが「目的語」)なのか、ということです。

もうお気づきになった人もいるかもしれませんが、日本語では英語と違って、SCV型の文の多くは1のSV型に分類されます。「何が何だ」とか、「何がどんなだ」、の文がそうですね。日本語のV(述語)は補語の働きもしている、ということができます。

その働きを考えることも興味深いのですが、ここでは文法的な正確さを求めているわけではないので、「きちんと言い表すために不足しているものは何か」がだいたいわかればそれで十分です。

 

さて、だんだんとSV以外の要素が増えてきて、混乱しそうになっていませんか?そんなときは短い文を自分で作って構文力を確認したり、新聞や読みかけの本などを材料にして、構文力で切り分ける練習をしたりしてみるといいですよ。